梅雨の時期になると清らかな白い花を咲かせる沙羅(さら)。一日で散ってしまう“はかなさ”に魅了される人も多く、仏教と深い関わりがある花としても知られています。2021年の開花は例年より早くなる予想で、6月下旬が見頃。雨の多い季節、沙羅を愛した先代住職の思いがあふれる花の寺を訪ねてみませんか。
沙羅の花の見ごろはいつ?咲くのは1日だけ?
関西花の寺の第8番霊場「應聖寺(おうしょうじ)」。白雉年間(650年ごろ)にインドの僧・法道仙人によって開基し、南北朝時代には播磨国守護・赤松則祐の祈願所として繁栄しました。江戸時代には姫路城主が訪れ、その遺品が残っています。
桜の時期が終わると境内は花でいっぱいに。アヤメやサツキ、シャクナゲなどが一斉に咲き始め、色鮮やかな花で彩られます。
中でも注目してほしいのが6月中旬~7月上旬に純白の花を咲かせる沙羅の花。
別名ナツツバキとも呼ばれ、朝に咲き、夕方には散ってしまう“はかなさ”に心を打たれる人も多いのでは。2021年の見ごろは6月下旬だそう。
先代住職と沙羅にまつわる不思議なエピソード
お釈迦(しゃか)様の入滅を現した涅槃(ねはん)図の四隅に描かれているほか、平家物語の一節「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」にも登場するなど、誰もが一度は耳にしたことがある花です。
※入滅…亡くなること
※涅槃図…亡くなる様子を描いた絵図
仏教と縁の深い沙羅に魅了された先代住職は、境内に約200本の木を植え、大切に育てました。
15年前の6月2日に亡くなったとき、まだ咲くはずのない花が一輪だけ咲いたそうです。きっと大好きだった沙羅に見守られていたのかもしれませんね。
季節によって衣を替える涅槃仏がお出迎え
山門左には「涅槃の庭」があります。5月末から6月上旬になると先代住職が長年かけて石に仏頭、仏足を刻み、胴体となる部分に植えたサツキが開花。
ピンクや赤、白の花衣を身にまとい、穏やかな顔で眠る涅槃仏を見ているとほっこりした気持ちになります。
四隅には沙羅の木が植えられ、涅槃図を立体的に表現。夏になると衣は緑一色で覆われ、季節によって衣を替えます。
本坊裏にある名勝應聖寺庭園もお見逃しなく!
本坊裏には山の斜面を利用し、大小の石を巧みに重ねあわせた江戸時代前期の名勝・應聖寺庭園(県指定文化財)があります。※別途500円が必要(抹茶と和菓子付き)
書院から庭を見ると、サツキやモミジ、山野草に彩られ、まるで襖(ふすま)絵を見ているかのよう。
最近、SNSで話題になっているのが、書院に置かれている座卓に庭園の景色が写り込んだ写真。黒光りする座卓に緑の木々が映る位置を探してシャッターを切ると幻想的な写真を撮ることができます。スマホやカメラ持参で、インスタ映えする一枚を狙ってみては?
庭を眺めながら銘菓「沙羅」を食べる至福のひととき
書院に入ると出てくるのが抹茶と銘菓「沙羅」。
涅槃仏を作った先代住職が沙羅のつぼみをイメージして考案しました。真っ白い羽二重餅の中にほっこりした甘さの黄身あんが入っていて、1911(明治44)年に創業した姫路の和菓子店「杵屋(きねや)」から販売されています。
沙羅の時期には、お寺でも購入することができます。
庭にひっそりと咲く山野草も見どころの一つ
境内一帯には約1,000種類を超える山野草が季節ごとに花開きます。山野草の魅力は飾らず、控えめな姿。ひっそりと咲く花を探すのも楽しみです。
初夏になると、つり鐘のような花を咲かせるホタルブクロ。
穂の下から先端に向かって咲くオカトラノオはしっぽのよう。
耳を澄ますとどこからともなく聞こえてくるカエルの鳴き声。庭園の池に張り出す木の枝には6~7月ごろ、泡に包まれたモリアオガエルの卵を見ることができます。
■詳細情報
■DATA
本記事はライターが取材・校正を行った上で作成した記事です。内容は2021年6月7日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。