子どもの感受性を育む絵本。最近では0歳から読み聞かせをしている家庭も増えています。姫路市立城内図書館の司書・髙濱由香さんに教えてもらった絵本の魅力や選ぶときのコツ、読み聞かせのテクニックなどを紹介します。
「絵本」がもたらす効果とは
姫路市の90%以上の保護者が、子どもが乳幼児のころから読書への働きかけを始めています。早い段階から絵本の読み聞かせをしている家庭が増えているようです。「言葉が豊かになった」「文字に興味を持った」「落ち着いて話が聞けるようになった」という声があり、文字の学習や心の成長のきっかけになっている様子。
また「本に出てきた人や物、動物などに関心を持ち、実物と結びつけて反応するようになった」と、想像力や思考力、判断力などが養われたという意見もありました。「夫が子どもに読み聞かせをする習慣がつき、一緒に楽しそうに本棚から本を選んでいる姿を見るのがうれしい」という母親もいて、親子や夫婦の関係にもよい影響を与えています。
※上記の内容は、2016年3月に姫路市が「姫路市子ども読書活動推進計画 第3次計画」を策定するにあたり、市内の0~8歳の子どもを持つ保護者を対象に実施した読書活動に関するアンケート結果を参照しています(調査実施期間=2015年5月中旬~6月中旬、有効調査票1174件)。
読み聞かせはスキンシップのチャンス
家庭での絵本の読み聞かせは、子どもにとってお父さんやお母さんが自分に向き合って語りかけてくれる特別な時間。
親にとっては、子どもと心を通わせながら過ごせるひととき。子どもも大人も、一緒に過ごした幸せな時間として思い出に残るはずです。子どもが成長過程に読書を通して生きる力を身に付け、より豊かな人生を送れるといいですね。
施設や園、学校でも、本を読むことの大切さを学ぶ機会はあります。
しかし、子どもの一番近くにいる保護者が読書に対する興味や関心を引き出すように働きかける必要があるのです。子どもの読書習慣は日常から形成されるもの。読書を生活の中に取り入れて継続して行いましょう。
絵本の読み聞かせテクニック
1.気負わず素直にゆっくりと
大げさに声色を変えると、その部分だけをおもしろがって、全体の内容が伝わりにくくなります。聞かせようと気負うのではなく、子どもとのスキンシップを楽しむような気持ちで読みましょう。
2.親子でコミュニケーション
「さぁどうぞ」「いくつ?」「これなんだ?」「探してみよう!」など、質問したり呼びかけたりするフレーズが出てきたら、実際に子どもとコミュニケーションを取りながら進めると、飽きずに聞き入ってくれます。
3.まずは絵を見せる
ページをめくってすぐに読み始めずに、少し絵を見る時間を。絵と文章を同時に見聞きすると混乱してしまうかもしれないので、まずは絵から物語を想像させてあげましょう。
絵本選びのコツ
書店や図書館には数多くの絵本が並んでいて、どれを購入したり借りたりするか悩む人も多いはず。下記を参考に選んでください。
1.テレビ番組やインターネットの影響を受けることなく、子どものためになる本なのかを考える
2.文章が読みやすく、正しい言葉が使われている
3.子どもが混乱しないように、1ページにつき1場面で、絵と文章の内容がしっかりと一致していること
4.乳児は話が続いていると認識しにくいので、1ページごとに完結し、どこから開いても読めること。また、乳幼児は習得している言葉が少ないため、絵だけで内容が想像できるものに
絵本を購入したものの子どもが気に入らなくて1回も読んでいないという状況にならないように、まずは図書館で借りて試し読みしてみるのもおすすめ。子どもが気に入った作品は、その後も読めるように購入を検討してみては。
書店スタッフ、図書館司書がおすすめする絵本
<井上書林>スタッフ・井上幸さん おすすめ!
『ぴょーん』
(まつおか たつひで/作・絵、ポプラ社 842円)
イヌやカエルなどさまざまな動物がぴょーんとジャンプをする話。言葉の繰り返しが好きなら、「ぴょーん」というフレーズが出てくるたびに、「ぴょーん」と言いながらまねしてジャンプしますよ。
『くっついた』
(三浦 太郎/作・絵、こぐま社 864円)
海や陸の生き物や人間同士がくっつく話で、最後にはママと子どもとパパが登場します。実際に家族でくっつきながら読めば幸せな気分になります。両親と触れ合えるので、気に入って何度も読む子が多いそう。
■DATA
<TSUTAYA 姫路広峰店>児童書担当・楠みさ子さん おすすめ!
『ぐりとぐらのおきゃくさま』
(中川 李枝子/作、山脇 百合子/絵、福音館書店 900円)
「ぐりとぐら」シリーズの中でも、クリスマスに読んでほしい作品。森で雪合戦をしていたぐりとぐらが見つけた大きな足跡は、森をぬけてぐりとぐらの家まで続いています。ドアを開けると玄関に大きな長靴、壁には真っ赤なオーバーと白いマフラー、赤い帽子が!その正体とは?
『ぜったいにおしちゃダメ?』
(ビル・コッター/作、サンクチュアリ出版 980円)
謎の生き物の「押しちゃえば?押しちゃえば?」という誘惑に負けてボタンを押してしまうと…。表紙のボタンは他の部分と手触りが違っていて、つい何度も押してしまいます。絵本を振ったり、こすったりする場面があって、子どもの好奇心を刺激します。
■DATA
<姫路市城内図書館>司書・髙濱由香さん おすすめ!
『クリスマス・イブ』
(マーガレット・ワイズ・ブラウン/作、ベニ・モントレソール/
絵、やがわ すみこ/訳、ほるぷ出版)
全ページがあたたかいオレンジ色の背景になっている珍しい絵本。本から少し離れて見ると、絵が浮かび上がって見えるのがおもしろいところ。シンプルなのに印象に残る作品です。
『おおきいツリーちいさいツリー』
(ロバート・バリー/作・絵、光吉 夏弥/訳、大日本図書)
人や動物みんなが自分にぴったりなクリスマスツリーを見つけて、幸せなクリスマスを迎える心温まる作品。プレゼントにおすすめ!
城内図書館では毎月、絵本の読み聞かせやストーリーテリングを行う「えほんのじかん」や「おはなし会」を実施しています。
次回の予定は、「おはなし会」(3歳くらいから)が12月24日(日)、「えほんのじかん」(2歳くらいから)が12月23日(祝・土)。
※いずれも午前11時~、入場無料、申し込み不要。市内の各分館でも行っています
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本記事はライターが取材・校正を行った上で作成した記事です。内容は2017年12月13日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。