佐用町・平福の宿場町に寄り添うに佇むレストラン「KUMOTSUKI(くもつき)」。地元の素材と自家製麹(こうじ)調味料で作る“郷土の優しさ”が感じられるような料理が自慢の一軒です。かつて酒蔵だった建物を生かした店内では、窓の向こうに広がる平福の山並みを借景に、ゆったりとした時間が流れます。夏のひまわり、秋の紅葉と、季節ごとに表情を変える自然を感じに、佐用町へ小さなドライブ旅に出かけてみませんか?
・「KUMOTSUKI(くもつき)」

姫路の市街地から中国自動車道を使って車でおよそ1時間。江戸時代の宿場町の面影が残る佐用町・平福にある古民家宿「NIPPONIA(ニッポニア)平福 宿場町」。その敷地内にあるのが、レストラン「KUMOTSUKI(くもつき)」です。

江戸初期に建てられたとされる「利神城(りかんじょう)跡」のすぐそばにある元酒蔵をリノベーションして誕生した同店。利神城が“雲を突くほど大きい城”として別名「雲突城(くもつきじょう)」と呼ばれていたことから、その名を「KUMOTSUKI」と名付けられました。
2021年のオープン以来、「地元食材のおいしさを伝えるレストラン」というコンセプトを貫き、地元食材をふんだんに使用した“土着の文化を伝える”ことを心がけています。

何年前からこの地にあったのかも定かではない歴史ある建物を、古き良き姿はそのままに、家具などを新たにして誕生したレストラン空間。席数は決して多くありませんが、どの席もゆったりと間隔が取られており、周囲を気にせず自分だけの時間を過ごせるのが魅力です。
大きく切り取られた窓の向こうには平福の山並みが広がり、秋には美しい紅葉も楽しめます。のどかな景観と、趣のある店内の雰囲気が重なり合い、訪れる人に“非日常のひととき”を届けてくれます。

レジを置くカウンターテーブルに目を向けると、よく見ると表面の文字や傷が歴史を物語っています。これは、前身である酒蔵で酒造りの際に使われていた酒樽を活用したものなのだとか。そのほかにも、一部が崩れたまま残した土壁や、古材を用いた壁のあしらいなど、店内の随所からどこかノスタルジックな空気が漂います。
・「神戸牛」を使ったビーフシチューがイチオシ

『盛本牧場産神戸ビーフのビーフシチュー』2,500円
同店のイチオシは、佐用町にある「盛本牧場」が手がける「神戸牛」を使ったビーフシチュー。ワンランク上の贅沢ランチ『KUMOTSUKI クモツキ御膳』(3,800円)のメインとして提供される一品で、ステーキほどの大きなブロック肉が2個も使われています。
ランチには季節のポタージュとライスorパンが付き、取材日のポタージュは、自家製タマネギ麹を使った「サツマイモのポタージュ」でした。地元食材を使うだけでなく、自家製の麹調味料を使っているのも同店のこだわり。優しい味わいが体にじんわりと染み渡ります。

歯がいらないほどやわらかく、とろけるような肉質にうっとり♪使用しているのは、「神戸牛」の中でもうま味が強いスネ肉の一部、“ちまき”と呼ばれる部位です。一般的にこの部位は、煮込むほどにうま味が増すと言われる一方で、筋繊維が太くしっかりとした肉質が特徴。そのため、同店ではとろとろになるまで丁寧に煮込んでいます。
さらに、その際に出る出汁をベースにデミグラスソースを手作りすることで、一滴たりとも余さずうま味を活用。とろけるお肉とコク深いデミグラスのハーモニーは、一度食べると忘れられなくなるおいしさです。
・定番ランチは全部で10種類以上!

『エビフライ(季節のスープとライスorパン付き)』1,500円
ランチタイムの定番メニューはビーフシチュー以外にも、10種類以上がラインアップ!創業当初はイタリアンがメニューがメインでしたが、来店客の声を受け、オープンから4年が経った現在では、洋食や和食などジャンルを問わず多彩なメニューがそろっています。
洋食の王道『エビフライ』も人気メニューの一つ。尾頭付きの大きなエビフライが2尾ものったボリューム満点の一皿で、子どもからお年寄りまで世代を問わず愛されています。

『サーモンのマリネ サラダランチ(季節のスープとライスorパン付き)』1,600円
サッパリとしたサラダで軽めにランチを済ませたい日にぴったりの一皿。紫キャベツのマリネやラディッシュ、キャロットラペなど、彩り豊かな食材が並び、見ているだけで気分まで華やぎます。
トップには、ディルとオリーブオイルに漬け込んだ脂のりの良いアトランティックサーモンをオン。塩麹を使った自家製のイタリアンドレッシングが、素材のうま味を優しく引き立てます。
・冬季限定!地元の特産品「自然薯」を使ったご当地メニューも

『自然薯ハンバーグ』1,800円 ※11月末~1月末ごろ限定
冬季は、佐用町の特産品・自然薯を使ったランチが登場!自然薯を混ぜ合わせた特製ハンバーグ、地元野菜のサラダ、とろろご飯、季節のポタージュ、小鉢が付いた、旬も郷土も感じるメニューです。

佐用町の自然薯は、なんといっても粘りと風味が格別!山に囲まれた盆地という地形と、昼夜の寒暖差が大きい気候から、粘りの強い上質な自然薯が育つのだそう。
その魅力を最もシンプルに味わえるのが、このとろろご飯。自然薯ならではの濃厚なうま味と力強い粘りが、温かいご飯に絡んで思わず箸が止まらなくなります。

刻んだものとすりおろしたもの、大小2種類の自然薯を混ぜ込んだハンバーグは、ジューシーでありながら、ほんのりもっちりとした食感が楽しい一品。大根おろしに、自家製のポン酢をかけてサッパリといただきます。
このポン酢は季節によって使う柑橘が変わるのも魅力。取材日にはカボスを使用し、12月には佐用町産のゆずへと変わるなど、時季ごとの風味の違いも楽しめます。
・自家製のスイーツにも宿る“土着”への思い

『もち大豆きなこのなめらかプリン』500円
料理同様、スイーツを手がけるのは、オーストラリアで7年間バリスタとして腕を磨いたシェフ。スイーツにも地元素材が使われており、“土着”への思いがしっかりと息づいています。
イチオシの『もち大豆きなこのなめらかプリン』は、佐用町の特産品・もち大豆きな粉と「佐用高校」の地卵をたっぷり使った、風味豊かなプリン。口当たりは驚くほどなめらかなプリンの上には、自家製黒糖カラメルがこれでもかというほどた~っぷりとかかっています。

『季節のシフォンケーキ』600円
平日は13:30~、土・日曜日・祝日は14:00~予約制で提供しているパンケーキに代わり、常時味わえるのがシフォンケーキ。「佐用高校」の地卵を使ったふわふわのシフォンケーキに、地元のジェラート店「アイス工房さなえ」のミルクジェラート、さらに生クリームと旬のフルーツが添えられています。

この日のフルーツは、佐用町・三日月で採れたリンゴ。焼きリンゴ専用の品種を、なんとも贅沢にコンポートに仕立て、大きくカットしたものをオン!シフォンケーキの素朴な味わいに、リンゴの甘みがふわりと広がり、思わずにっこりと、頬がゆるむおいしさです。

元酒蔵を受け継ぎ、2021年にオープンした「KUMOTSUKI」は、食を通じて“土着”への思いと“発酵”の魅力に触れられるお店。ランチやカフェに加え、ディナータイムには6,000円/人~の完全予約制コースも用意されています。
佐用の景観を眺めながら、静かに食事を楽しみたい日にぴったりの一軒です。
■詳細情報
■DATA
KUMOTSUKI(くもつき)
- 所在地
- 兵庫県佐用郡佐用町平福475-1

- 電話番号
- 0790-71-0700
- 営業時間
- ランチ/11:00〜L.O.14:00
カフェ /13:00~L.O.15:00
ディナー/17:00〜21:00(L.O.20:00) ※完全予約制
本記事はライターが取材・校正を行った上で作成した記事です。内容は2025年12月4日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。







