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2025.9.12
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【高砂】「Farmer’s kitchen INNUIT」人をつなぐ温かなログハウスレストランへ

高御位山(たかみくらやま)の雄大な姿を望む田園に佇む「Farmer’s kitchen INNUIT(イヌイット)」。地元の間伐材で建てられたログハウスの店内では、播磨アルプスの稜線を望みながら心温まる料理が楽しめます。信頼する生産者から届く野菜や米、肉、魚を生かした料理は滋味深く、訪れる人を魅了しています。薪ストーブが灯る冬には、常連客との会話が自然に生まれるぬくもりあふれる空間に。旬を味わい、人と人とのつながりを感じられる特別な一軒です。

・「Farmer’s kitchen INNUIT(イヌイット)」

高御位山(たかみくらやま)、別名「播磨富士」を目の前に望み、広大な田園風景に溶け込むように佇む一軒のログハウス。そこには、自然と人とのつながりから生まれたぬくもりあるレストラン「Farmer’s kitchen INNUIT(イヌイット)」があります。

東加古川で8年間営んでいた店の拠点を現在の場所に移したきっかけは、とある常連さんの「うちの山の木をつかっていいよ」という一言だったとか。間伐材や、廃材を使ったお店を作りたいというオーナーの夢が動き出します。お店の常連客や数えきれないほどの縁がつながり、自らの手によって、2001年にお店が完成しました。

店内の窓からは、“播磨アルプス”とも呼ばれる山々の美しい稜線を望むことができ、訪れる人を穏やかな風景で迎えてくれます。

現在その思いと店の味を受け継いでキッチンに立つ有村さんも、もとはオーナーの親友である父親に連れられて子どもの時に店造りに参加した一人だったと言います。一度は大阪で営業マンとして勤めるも、「自分の手で作ったものでお客さんに喜んでもらいたい」とオーナーに直談判。厨房に立つことを決意しシェフの道へ進みました。

「この店で食べた野菜の味が忘れられなくて」そんな思いを胸に、今は自分の手で旬の野菜をおいしく仕立てています。

店内は、立派な梁(はり)が通る開放感あふれる空間。4人掛け・6人掛けのテーブル席やカウンター席があり、常連とシェフの心地よい会話が飛び交います。

冬になると店内には薪ストーブの炎が灯り、やわらかなぬくもりが空間を包み込みます。使われる薪はすべて知人や常連客から持ち寄られたもの。約2年もの時間をかけて丁寧に乾燥させた薪が、冬の寒さからお店を守り、訪れる人々に心地よい安らぎを届けてくれます。


・信頼を寄せる生産者から届く食材

「信頼する生産者からすばらしい野菜や肉、野菜が届くので、ぼくはそれに手を添えるだけです」と有村さん。姫路市夢前町の「八方美菜」をはじめ、伊川谷の「渋谷(しぶたに)農園」や多可町の「そらまめ農場」など、県内各地から毎日新鮮な野菜や卵が届けられます。素材そのもののおいしさや品質はもちろん、その生産者の情熱や思いに共感できるのだといいます。

体に負担の少ない、安心して食べられるような食材選びを、決して特別なことではなく、ごく当たり前のようにしている同店。それに呼応するように、同じ思いを持った生産者とのつながりが自然と広がってきました。

そのつながりから生まれたのが米作り。無農薬・無化学肥料にこだわり、種の選別から苗の育成、田植え、刈り取り、天日干し、脱穀までを昔ながらの方法で手がけています。丁寧に育てられた自家米は、12月の1カ月限定で提供される特別な一品。ぜひその時期を狙って訪れてみて。

・親子の縁で受け継がれる味

『八丁味噌と大根おろしのハンバーグランチ』1,700円

ランチは、11種類のメインがラインアップ。全てのメニューに大根サラダとスープ、白米か玄米かパンから選べるセットになっています。

中でもハンバーグメニューは、王道のデミグラスソース仕立てのものからポン酢と大根おろしを使った和風のものまで、5種類も用意されています。

取材日には、『八丁味噌と大根おろしのハンバーグランチ』をチョイス。お肉は「肉匠 まる脇」から届く鮮度抜群のミンチを使用。臭みはなく、噛むほどに力強い肉のうま味が感じられます。その肉に負けないよう、自家製味噌に八丁味噌をブレンドしたコク深いソースを合わせ、大根おろしとスライスタマネギがサッパリと後味を整えてくれます。

ハンバーグは、表面にしっかりと香ばしい焼き目がつき、中はふっくらとやわらか。絶妙な火入れから、料理人の丁寧な仕事ぶりが感じられます。

さらに、プレートを彩るのはその朝に収穫された新鮮野菜。メインの脇に添えられたルッコラや万願寺とうがらし、ジャガイモ、カボチャはどれも驚くほど味が濃く、一口で「野菜って、こんなに甘いんだ」と驚かされます。

定番の大根サラダのドレッシングももちろん自家製。醤油をベースにすり下ろしたニンジンやタマネギ、ショウガに、出汁の風味が香る魚醤「いしるだし」、隠し味になんと白味噌が使われています。「飲めるほどおいしい」とお客さんから好評なんだとか。

お米には、豊岡で化学肥料や農薬を一切使わずに栽培している「てらだ農園」の玄米を使用しています。その炊き上がりは、まさに“モチモチを超えたモッチモチ”の食感で、100%玄米とは思えないほどやわらか。玄米特有の胚芽の硬さをほとんど感じないため、普段玄米になじみのない人でも食べやすいのが魅力です。

さらに大豆と一緒に炊き上げることで、香ばしさやほくほく感が加わり、食感や風味がより豊かに。



・旬を味わう魚料理も

『その日のお魚料理』1,800円(ランチセット価格)

本日の魚料理は、信頼をおく魚屋「黒田商店」から届いた明石で水揚げされたサワラ。皮目をハーブと一緒にカリッと焼き上げた後にオーブンで低温でじっくり火を入れることで、身はふんわりそれでいて身が詰まっていて白身の甘みをしっかりと感じられます。

そのうま味を引き立てているのが、淡路島・五色浜で作られる「自凝雫塩(おのころしずくしお)」。角のない優しい塩味は、同店の料理に欠かせない存在だそう。自家製塩麹(こうじ)や甘酒に白バルサミコ酢を加えたソースが絡むことで、まろやかなコクと優しい塩味が加わり、さっぱりとしたサワラに奥行きを与えています。

まるで絵画のような美しく盛り付けされたサラダにはこの日、「スターオブディビット」というちょっと珍しいオクラが、彩りを添えていました。目でも舌でも楽しませてくれる一皿は、心も豊かにしてくれます。

・おやつ屋「草の芽」から届くユニークなスイーツ

『豆乳パウンドケーキ』(単品)605円、(ドリンクケーキセット)1,000円

食後に、小麦・卵・乳製品不使用・植物性のお菓子を手がけるおやつ屋「草の芽」から届けられるパウンドケーキはいかが?野菜や果物を使ったユニークな組み合わせが人気の理由です。この日のパウンドケーキは、ブルーベリーとバジルの爽やかな組み合わせ。「たじま屋」の濃厚な豆乳を使った生地は、しっとりとした口当たりに仕上がっています。

イヌイット自家製アイスクリームも見逃せません。豆乳や生クリームに、平飼い卵を贅沢に使い、ほんのりラム酒をきかせた大人の味。濃厚なのに後味はスッキリとしていて、食後にぴったり。

さらにフェアトレードを扱う「ウィンドファーム」のオーガニックコーヒーはぜひブラックで。深めのグアテマラが、料理とスイーツの余韻を心地よく締めくくってくれます。

「人とのつながりに助けられながらやっています」有村さんがそう語るように、このお店には生産者や常連客、地域の人々との“縁”が自然と集まっています。料理だけでなく、人との出会いからもエネルギーをもらえる、心温まるレストランです。

■詳細情報

■DATA

Farmer's kitchen INNUIT(イヌイット)

所在地
兵庫県高砂市阿弥陀町阿弥陀 字中道99-1
電話番号
079-446-8003
営業時間
ランチ/11:30~15:00(L.O.14:00)
ディナー/17:30~21:00(L.O.20:00)
※定休日の前日は20:00閉店

本記事はライターが取材・校正を行った上で作成した記事です。内容は2025年9月1日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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