兵庫県はりまエリアの“楽しい”をチョイスする地域情報サイト TANOSU [タノス]
2025.9.28
6,397 views

【宍粟】「トロワパン」古代小麦を使用した“腸が喜ぶパン屋”がオープン!パンや野菜が主役のランチも

宍粟市一宮町の小さな村に、2025年6月28日「Trois Pain(トロワパン)」という一軒のベーカリーが誕生しました。ここでは、兵庫県内はもちろん、日本国内でも珍しい「古代小麦」を使ったパンを販売。早くもその噂を聞きつけ遠方から足を運ぶファンも多く、パン好きの間でじわじわと話題を集めています。さらに9月からは、ヴィーガンカフェで腕を磨いた奥さんが手がける、体に優しいランチもスタート。のどかな宍粟の自然に囲まれながら、ほっと一息、肩の力を抜いて過ごしてみませんか?

・「Trois Pain(トロワパン)」

姫路の中心地から中国自動車道を利用し、車を1時間ちょっと走らせたところにある宍粟市一宮町。市内の9割を森林が占めているというこの土地に、2025年6月28日「Trois Pain(トロワパン)」がオープンしました。

格子戸をガラガラと開けると、目の前に現れるのは木材で造られた真新しいショーケースとレジカウンター。なんとこれらはすべて、30年以上も大工の道に携わり、さらにここ十数年は日本の伝統構法建築を手がけていたという現役大工の店主自らの手で造り上げられたというから驚きです。

30年以上もの経験が息づく木目の美しいショーケースは、やわらかな風合いと日本建築ならではの調和を見事に醸(かも)し出しています。

経営哲学の一つである「三方よし」という、持続可能な社会に貢献する商いの精神に、フランス語で“3”を意味する「トロワ」をかけて名付けられた「トロワパン」。その思いは店名だけでなく、店主が経営し建築・住宅関連事業から農産物の生産まで幅広く手がける「トロワプロジェクト株式会社」にも込められています。

大工とパン職人という全く異なる道を選んだその理由は、「ある日急に降ってきた」という奇跡のような出合いから。“健康住宅”を手がけてきた店主にとって、食への関心はもともと深いものの、実はパンを食べる習慣はほとんどなかったそう。ですが、ある日パンづくりが奥深いことを知ったことで生来の職人気質が突き動かされ、「パンの本場・フランスで製法を学ぼう」と決意。約2カ月の滞在を経て、現地でレシピや技術を身につけました。

店主が扱う小麦は、「エポートル」「セーグル」「アングラン」という3種類の古代小麦※。いずれも、日本ではなかなか手に入らない希少な品種です。それを“粉”の状態ではなく、“粒”の状態で仕入れ、毎朝必要な分だけ石臼で製粉するのが“トロワパン流”。ほぼ全粒粉に近い同店の小麦粉は胚芽を含むため酸化が早く、このひと手間が欠かせないのだそう。

同店のパンに欠かせないのはもう一つ、ルヴァン種と呼ばれる天然酵母。この酵母のおかげでじっくりと発酵を進めさせることができ、ふんわりと優しい口あたりに。さらに焼き上がったときには、小麦本来の香ばしい香りが豊かに広がります。

※古代小麦とは…人類が数千年前から栽培してきた原種に近い小麦のこと。

古代小麦は手に入りにくいという希少性に加え、一般的な強力粉に比べてグルテンが少なく膨らみにくいという性質も。ましてや古代小麦を使ったパン作りを教えてもらったフランスとは、温度や湿度といった環境がまったく異なるため、未だに生地と対話をしながら水分量やこね方、発酵時間などを調整するなど、試行錯誤をしていると店主は語ります。

購入したパンはテイクアウトのほか、縁側に配された横並びの6席と、4人がけテーブル1卓でイートインも可能です。


・3種類の古代小麦を使い分け

『アングラン』1,200円

小麦の特性上、機械でこねることができず必ず手ごねで仕上げるという『アングラン』。1万2年ほど前、人類が初めて育てた植物と言われる「アングラン」は、ナッツのような芳しい風味とほんのりと舌の上に広がるような自然な甘みが特長です。

カットするとちょっぴり黄色みがかっているのも、この小麦の特徴の一つ。分厚く存在感のある皮とは一転、中は指に生地が吸い付くほどのしっとり感と弾力があり、外と中とのコントラストに衝撃を受けずにはいられません。

『エポートル』1,100円

日本名の「スペルト小麦」はパン好きの中には、一度は聞いたことがある人もいるのでは?「エポートル」はその英名で、古代ローマ時代から残ると言われています。「セーグル」や「アングラン」と比較すると膨らみやすく、同店のラインアップの中でも最もやわらかいパン。ラグビーボールのようにごろんと凛々しい姿にも思わず惹かれます。

『セーグル』1,000円

『セーグル』はいわゆるライ麦パン。「独特の酸味が苦手」と日本人にはあまりなじみのないライ麦パンですが、このパンは酸味が丸く風味が豊かなのが魅力です。ライ麦パンにあまり親しみのない人も、ぜひこの機会に一度試してほしい、そんなおすすめの一品です。

『超高級濃厚ブリオッシュ』2,300円

低温で丸2日間発酵させることで、酸味を抑え、ふんわりしっとりとした食感に仕上げた『超高級濃厚ブリオッシュ』も必見!ノルマンディ産のバターや平飼い卵、メソロンギ潟湖で採れた非加熱天日塩など、素材からこだわり尽くした至高の逸品です。

ほかのパンとは違い、バターが贅沢に使われているため、口に入れた瞬間から広がる芳醇な香りと、食べ終えた後まで続く豊かな余韻を楽しめます。

・9月からランチがスタート!

『パンランチプレート』1,200円 ※数量限定

オープンから2カ月が経ち、少し落ち着いてきた9月から、ヴィーガンレストランで腕を磨いたという奥さんが手がけるランチメニューがスタート!10月からは日・月曜日をカフェ&らんち内容はその時々で変わりますが、主役のパンが1~2種類と、メイン料理、野菜をふんだんに使った副菜やサラダ、スープなどが一皿に盛られています。

この日のパンは『アングラン』と『エポートル』。プラス50円でノルマンディ産のバターを追加することもできます。

まずは何も付けずに味わうのが鉄則!「噛むほどに甘みとふくよかな香りが広がって、ずっと口に含んでいたくなります」と、取材日に居合わせたお客さんの言葉どおり、シンプルだからこそ香りをダイレクトに感じられる同店のパン。バターを付けると、そこにミルキーな味わいが加わり、口の中で香りとうま味が溶け合い、幸福感が続きます。

取材日のメインは「水ナスの味噌グラタン」。野菜はなるべく同じ市内にある自然菜園カフェ「遊楽里(ゆらり)」から仕入れています。旬の水ナスを分厚くカットし、水分を閉じ込めるようにジューシーにグリル。そこに鶏ミンチと大麦をブレンドした肉そぼろを合わせ、自家製3年味噌で仕上げた、手間暇かけた一品です。

このほか、アガベシロップとニンニク、醤油で味付けをした「やみつきフライドポテト」や、「貊塩(みゃくえん)」のみで味付けをした「塩ポトフ」、豆腐マヨネーズがかかったサラダなども。2営業日前までに連絡をしておけばヴィーガン仕様にも対応してもらえるので、希望の場合は個別に電話で相談を。



・ヴィーガンスイーツやこだわりのドリンクも

『Vegan ラム酒香るティラミス』650円

スイーツメニューは全3種類、そのうち2種類がヴィーガン仕様。製粉時に出る“ふすま小麦”も有効活用し、古代小麦を余すことなく使っています。

イチオシは、ラム酒の香りがふわっと広がる大人のティラミス。一般的にはマスカルポーネや生クリームを使用するティラミスですが、同店では豆腐で代用。さらにデーツやオーガニックシュガー、メイプルシロップなど自然な甘みを生かしているため、ボリュームがありながらも軽やかに楽しめます。

『マンデリン』600円

ドリンクもこだわり派ぞろい。特に3種類あるコーヒーは、すべて豆の仕入れ先を変えるほどの徹底ぶりです。

深みのあるコクが自慢の『マンデリン』は、九州のマンデリン専門店から自家焙煎豆を厳選。さらにマンデリンの最高格付けであるG1ランクを使用しています。どっしりと厚みがありながら、奥行きのある深い味わいがスイーツにぴったり♪

『ブラノーラ』(250g)1,500円

オーツ麦などの穀物を使う“グラノーラ”ならぬ、小麦を使った『ブラノーラ』はいかが?「アングラン」と「エポートル」を使ったものがあり、食べ比べをすると小麦の違いは一目瞭然!

「アングラン」はゴロゴロと食べ応えがあるのに対し、「エポートル」はさっくり軽やかな食感が特徴。
どちらもミルクに浸して食べるのではなく、クッキーのようにそのままつまんで味わうのがおすすめです。

古代小麦からこだわりのスイーツ、空間まで、すべてに職人の手仕事が息づく「トロワパン」。宍粟の小さな村で出合える、特別なおいしさを体験してみては?

■DATA

Trois Pain(トロワパン)

所在地
兵庫県宍粟市一宮町安積698
電話番号
080-7943-6985
営業時間
【パン販売】金・土曜日/11:00~売り切れ次第終了 
【カフェ&ランチ営業】日・月月曜日/11:00~売り切れ次第終了
※今後営業日時が変更になる可能性が高いため、来店前に公式Instagramで確認を。

本記事はライターが取材・校正を行った上で作成した記事です。内容は2025年9月19日時点の情報のため、最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

この記事をお気に入りに保存する
TOP