Q.犬の去勢・避妊手術で抑えられること、がんの緩和治療で家族にできることは?

Q.犬の去勢・避妊手術で抑えられること、がんの緩和治療で家族にできることは?
手術のこと、病気のこと──愛犬の健康について考える場面は突然やってくるかもしれません。今回の質問は、去勢・避妊手術と、がんと診断されたときの緩和ケアについて。いざというときのためにも、今家族でできることを少しずつ考えてみませんか?

犬の去勢・避妊手術で抑えられる行動は?

犬の去勢・避妊手術で抑えられる行動は?
Q.7歳のオスと3歳のメスの柴犬を飼っていますが、去勢や避妊手術はしていません。発情期には、オスが新しいおもちゃや食べ物などに反応して私の指をかむなど凶暴になります。去勢すると、穏やかな性格になるのでしょうか?
ライター

今回教えてくれるのは、エルザ動物病院グループに所属し、ペットの問題行動の相談や治療を行う、行動科の丹下真由美獣医師です。丹下先生、よろしくお願いします。

ライター

飼い主がけがをするほど深刻な状態のようです。ワンちゃんが凶暴化する原因は何でしょうか?

丹下 獣医師

相談内容からして、現在の問題行動には複数の要因が関係していると考えられます。まず、避妊手術をしていないメス犬の発情によって、オス犬が性ホルモンの影響を強く受けていると思われます。本能的な興奮が抑えきれず、攻撃的な行動につながっているかもしれません。

ライター

新しいおもちゃや食べ物への反応も、何か関係があるのでしょうか?

丹下 獣医師

新しいおもちゃや食べ物などに関する攻撃性は、性ホルモンの影響よりも、「所有性攻撃行動」と考えられます。
例えば、ワンちゃん自身にとって「価値がある」「大切」と感じている物や人に、飼い主が触れようとした場合です。ワンちゃんは、それを守ろうと防護するため、攻撃的な行動を見せることがあります。

ライター

性別や発情期にかかわらず、考えられる行動なのですね。飼い主からの質問にもありましたが、そのような行動は去勢・避妊手術を受けることで少しは抑えられますか?

丹下 獣医師

性ホルモンによる興奮は、去勢手術によってある程度落ち着くことが期待できます。メス犬の避妊手術も合わせて行うことで、オス犬の精神的な負担も軽減されるでしょう。 ただし、これまでに学習された行動は、手術だけでは改善しにくい可能性があるため、「行動治療」も必要になるかもしれません。

ライター

「行動治療」は、どういった治療でしょうか?

丹下 獣医師

主には、犬との接し方や環境について専門的に見直す治療を意味します。これは単なる「しつけ」とは異なり、犬の感情や背景に寄り添って改善していくことを目指すものです。

質問者のワンちゃんは、7歳という年齢のため、性格がある程度形成されていることが考えられます。そのため、治療は無理のない範囲で少しずつ対応していくことが大切です。特に、すでに飼い主が大きなけがをしている状況では、無理をせず、安全を最優先にして慎重に進めていくべきです。まずは、かかりつけの動物病院に相談し、手術と合わせて行動治療について考えていきましょう。

当院にも行動科があります。ぜひ公式HPを見て、受診の参考にしてください。

➡︎「行動科」の詳細はこちら
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がんの緩和治療で家族にできること

がんの緩和治療で家族にできること
Q.我が家の愛犬にがんが見つかり、緩和治療(緩和ケア)を選択しました。決断したはずが、毎日のちょっとした変化が気になり、生きた心地がしません。緩和治療を選んだ家族に大切なことは何ですか?
ライター

今回教えてくれるのは、喜多彩名さん。エルザ動物病院グループの愛玩動物看護師です。喜多さん、よろしくお願いします。

ライター

飼い主は現在、精神的にとても辛い状況だと思います。どのように気持ちを切り替えるといいでしょうか?

喜多 愛玩動物
看護師

「この選択で良かったのか」と葛藤する気持ちは、愛情があるからこそ生まれます。どんなに心を決めた飼い主でも、病気の進行やわずかな変化に敏感になります。小さな変化も、かけがえのない存在だからこそ不安になって当然だと思います。

ライター

「緩和治療(緩和ケア)」について教えてください。

喜多 愛玩動物
看護師

「緩和治療」は、がんを消失させることを目的とした「根治治療」とは異なり、痛みや吐き気などの苦痛をできるだけ取り除くことを目指したものです。苦痛を軽減することもですが、その子らしく、穏やかな生活ができるように支えることが大切です。
言葉を話せないペットにとっては、飼い主の温かく見守るまなざしや気持ちが何よりの安心になります。

どのように最期まで過ごしてほしいのか。それは各家庭によってさまざまで、正解はありません。そのため、今後病態が変化した時の対応も含め、家族でしっかりと話し合うことが大切です。

ライター

家族間での支え合いも必要となってきますよね。家族での話し合い以外に、愛犬に対してできることはありますか?

喜多 愛玩動物
看護師

“今、一緒にいられる時間”を、どうか大切にしてください。慣れたおうちで大好きな飼い主と一緒に過ごせることは、ワンちゃんにとって何よりの幸せです。

好きだった遊び、場所、ごはんなど、“その子らしさ”を思い出しながら、少しでも穏やかな日々が送れるよう、生活環境を整えてあげるのもいいでしょう。

ライター

ずっと一緒に過ごしてきた飼い主だからこそできるサポートですね。

喜多 愛玩動物
看護師

緩和治療を選んだ後も、迷いや不安は尽きないかもしれません。そんな時は、どうか家族だけで抱え込まず、動物病院などの専門家に相談してください。質問者とワンちゃんが、愛情あふれる時間を少しでも長く過ごせるよう、心から願っています。

通院や治療が負担になるワンちゃんもいます。当院では、往診の相談も受け付けています。獣医師やスタッフと一緒に、愛犬にとって最適なケアを見つけていきましょう。


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エルザ動物病院グループ
エルザ動物病院グループ

「エルザ動物病院グループ」は、動物たちの健康と飼い主との豊かな暮らしを守るため、「動物の幸せを第一に考える」診療を提供している。
一般診療や予防医療、健康診断をはじめ、ペットフードの相談やしつけセミナーの開催、さらには専門科診療やMRI・CTなどの高度医療機器を活用した検査、夜間救急診療まで幅広く対応。
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